Mimaのゆるっと趣味ルーム

観た映画や聴いた音楽についてつらつらと思ったことを書くブログ。普段はゆるっと、ごく稀に大真面目に。

Mimaの個人的2017年年間洋楽ベストその1 -30位~21位

こんにちは、Mimaです。

音楽や映画が好きな自分にとって、雑誌や著名ミュージシャンが毎年年の瀬に挙げる年間ベストは、読んでいて面白いものがあります。自分と感覚が合えばうれしいし、合わなくても別の視点を提供してくれるし、知らないものがあれば「おさえておこう」となる、自分が芸術を鑑賞する際の視野を広げてくれるものです。

 

最近では、ブログやツイッター等で個人が年間ベストを発信することも多くなってきました。これも上記の理由はもちろん、「一ファンの個人的な感覚」に直に触れることができて面白いな、と思っています。業界と直接つながってないからこその正直な感覚には、パーソナルな思い入れが反映されていて、違った楽しみ方を感じつつ読んだりしています。

 

そこで私も僭越ながらその流れに乗ってみることにしました。今年はあまり新作映画を観れていないので、比較的チェックしている洋楽に絞って、年間ベスト30を決めてみました。楽曲へのコメントはすべて個人的な見解であり、ランキングも個人的な好みなので、「一洋楽ファンのたわごと」くらいの感覚で読んでいただければ幸いです。

 

 30位

Run For Cover - The Killers

www.youtube.com00年代前半からアメリカのロックシーンを牽引してきたバンド、ザ・キラーズの最新アルバム『Wonderful Wonderful』からの2ndシングル。80sニューウェーブ的キャッチーさと、ファストで疾走感あふれるメロディが見事。歌詞は、DVを受ける女性に「逃げられるうちに逃げろ、自分のために」とうたっているが、ただの励ましソングでは終わらない。アメリカの黒人ボクサーで、その生きざまと突然かつ不信な死が今なお様々なメディアで取り上げられるソニー・リストンと、彼が夜道で拳を上げて歌うボブ・マーリーの「Redemption Song」のモチーフ。二番に入ると語り手の母親が登場し、彼女は逃げきれず命を落としたことが暗喩される。そしてコーラスでこう締めくくる。「振り返るな、身を守るためにひたすら逃げろ」と。MVも歌詞の女性とシンクロしつつ、最後に逆転のカタルシスが待つ。ブランドン・フラワーズの精神性にあふれるパワフルな名曲。

 

29位

Havana feat. Young Thug - Camila Cabello

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キューバハバナで生まれ、5歳でマイアミに移り住んだカミラ・カベロ。マイアミといえば、80年代に起きたマイアミ・サウンド・マシーンを筆頭とする「ファンカラティーナ」のブームの中心地でもあり、ヒスパニック系移民の多く住む場所だ。フィーチャリングのヤング・サグはジョージア州アトランタ出身。この二人のロマンスの掛け合いを軸に、「私の心は半分ハバナにあるの」とカミラがコーラスで歌う。60年代のハリー・べラフォンテを思わせるミッドテンポなカリプソ風のグルーヴに、カミラのしっとりとしたボーカルが絶妙にマッチする。MVも60年代初期のハリウッドクラシックを思わせる見事な仕上がり。

 

28位

Thunder - Imagine Dragons

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ロック不遇の時代と言われる昨今。確かにヒットチャートにバンドスタイルのアーティストは少ないし、彼らがチャック・ベリーエルヴィス・プレスリーから始まりビートルズローリング・ストーンズのようなロックンロールサウンドを展開しているかと言われるとそうでもないことのほうが多い。ではロックは死んだのか。私はそうは思わない。エレキを鳴らさずとも、ロックに大切なのは魂、スピリットだと思うのだ。ボーカルのダン・レイノルズがAメロとBメロで歌う内容は、幼少期の鬱憤、「お前は普通だ」「ビッグスターになろうなんて何様だ?」と嘲笑された学生時代、そして彼は「おれは稲光から雷になったんだ」とコーラスで歌う。「Thunder, feel the thunder / Lightning then the thunder」というシンプルな繰り返しは鑑賞者、特にライブではシングアロングとして観客と一体化するだろう。そしてこのフレーズの間に入る「ドン!ドン!ドン!」と鳴るドラムビートは、さらに曲のテンションをヒートアップさせる。ギターソロはない。リズムトラックをベースにヒップホップ的アプローチで作曲された曲であり、三分程度のいわゆる「ポップソング」だ。しかし同時に、新しい時代のロックアンセムでもある。

 

27位

Slow Hands - Niall Horan

 

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1Dのメンバー、ナイル・ホーランによるソロ1st『Flicker』は、時代に逆行するかのようなメロウでアコースティックなナンバーであふれていて、大勢のブレーンが携わって1曲の音をしっかりプロデュースするのが当たり前になった今、そよ風のような優しい響きをもった嬉しいサプライズだった。「70年代のフリートウッド・マックイーグルスを参考にした」というアルバムの中で、少しエレクトリックな響きを持つのがこの曲だ。とはいえ、電子音で構成されたわけではなく、生の楽器を人間が演奏しているのは変わらない。ナイルいわく、80年代初期のドン・ヘンリーのファンキーな楽曲をイメージしたらしい。道理でアルバム内で浮くこともなく、シングルとしてしっかりチャートインするパンチを持った曲になったわけだ。「女の子に誘われる」というセクシーな内容をソフトにさらっと歌い上げるナイルのボーカルも素晴らしい。

 

26位

...Ready For It? - Taylor Swift

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アメリカでは早くも「2017年もっとも売れたアルバム」になり、世界中のファンが待ち望んでいたテイラー・スウィフトの新譜『reputation』。1stシングル「Look What You Made Me Do」で「昔のテイラーは電話に出られないの。なぜって?彼女は死んだからよ」と、ニューテイラー誕生を予告、MVでも「rep」の文字の服をまとい頂点に立つテイラーが、過去のMVのテイラーを『バイオハザード』に出てくるようなレーザーに蹴落としていたのが印象的だった。そしてこの2ndシングルで、アグレッシブなビートにラップのような韻を踏んだ歌詞をたたみかけるように繰り出し、聴き手にこう問いかける。「準備はいい?」。強烈なシンセバイブは流石のマックス・マーティンによるプロダクション。また、初期のころからの、文学、映画、音楽等から引用し巧みに再構築して自らの世界観を築く作詞スタイルは健在で、Aメロでは『オペラ座の怪人』から『V・フォー・ヴェンデッタ』、Bメロではシェイクスピア原作の映画『じゃじゃ馬ならし』のジェンダーロールを入れ替えつつ、当時夫婦だったリチャード・バートンエリザベス・テイラーに絡めたワードプレイ等そのセンスは冴えわたっている。アルバム内に頻出する「dream」「game」といったワードも登場し、本格的にニューテイラーの誕生を宣言した。最早死角なしのニューテイラーの今後に期待が高まるクールな一曲。

 

25位

Holy Mountain - Noel Gallagher's High Flying Birds

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ノエル・ギャラガーの新譜、そしてこの1stシングルは、オアシス的ブリットポップを根底に持ちつつも、そことは真逆に位置するようなフィル・スペクターオーケストレーションで、60年代後半のバロック、サイケ黄金期のような風格を携えたポップチューンだ。自分の予想とかけ離れていたので聴き始めは正直戸惑ったが、聴いているうちにノエルらしいメロディだなあと思い始めた。おそらくここに至ったらノエルの思惑通りなのだろう。常にコアとしてきた60sへの新たな解釈であって、路線変更を試みたわけではないのだ。歌詞もラブソングであるということはわかるが、1969年が出てくるようにサイケデリックな言い回しで単純な愛のメッセージではない。好き嫌いは分かれるだろうが、ノエルが稀代のソングライターであることは紛れもない事実だということを証明してくれる一曲。

 

24位

I'm The One feat. Justin Bieber, Quavo, Chance The Rapper & Lil Wayne - DJ Khaled

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DJキャレッドといえば、今年を代表するサマーヒット「Wild Thoughts」の人気がいまだ衰えないが、個人的にはこちらの曲のほうが好きだ。DJキャレッドがこの曲でやってのけたのは、トロピカル・ハウス的トラックをベースに、トラップ界のラッパークエヴォ、ゴスペルとソウルをルーツにサザン・ソウルを継承するラッパーであるチャンス・ザ・ラッパー、ギャングスタラップの時代から変化するヒップホップ界を独特のスタイルで生き抜いてきたリル・ウェインというバックグラウンドの異なるラッパーに、クエヴォが5分で書き上げたという歌詞をもとにマイクトスをしていくオールドスクールなスタイルをブレンド。さらにコーラスにジャスティン・ビーバーの甘くソフトなボーカルを入れることで、ダイレクトにマイクトスを繋げずワンクッション挟んだポップソングとして成立させたのだ。70年代終わりから始まったヒップホップ、ラップの歴史を総まとめしながら、現役のラッパー、そしてポップスターそれぞれに見せ場を与え、「I'm The One」と言わせたのだ。そしてDJキャレッドを含め、ここに登場するアーティストたちがそれぞれの分野で「The One」的人気を誇る人たちなのは言うまでもない。

 

23位

Los Ageless - St. Vincent

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このサウンド、この歌詞はセイント・ヴィンセントにしか描けない世界観。デヴィッド・ボウイケイト・ブッシュを影響を受けたアーティストに挙げ、ボウイの曲でお気に入りは、アルバム『Scary Monsters (And Super Creeps)』のオープニングトラックである「It's No Game (Part One)」だと言うのだから実験性と最先端のポップスの融合であることは紛れもない事実。それでいてオールドファッションでもあり、ロック、ジャズ、サイケデリック等様々な要素を感じ取れるのだが、「どんな音楽?」と聞かれると、「セイント・ヴィンセント」としか答えられないのである。しかも、アルバムを出す度にサウンドや歌詞の世界観は変化し、トーキング・ヘッズデヴィッド・バーンとのコラボアルバムなど既存の枠にはまらないスタイルでありながら、やはり「セイント・ヴィンセント」であり「ポップ」なのだ。正直自分でも言っていることがわからないのだけれど…。もう曲を聴いて、アルバムを聴いて、各々に解釈をゆだねるしかないのだと思うし、そういった作品作りが許される類い稀なポップ界の才人なのだ。この曲も、「Los Angeles(ロサンゼルス)」と「Los Ageless」をひっかけ、ショービズ界における年齢、美的イメージを歌いつつ、その中でかき乱される人間関係、恋愛、そして自らのアイデンティティ…少なくとも私はそう解釈している。だが、おそらくこの曲にもダブルミーニングや引用、ワードプレイがいたるところにちりばめられていると思うので、あくまで一つの解釈である。いずれにせよ、彼女がポップス界で突出したセンスを持っているのは確かだろう。

 

22位

Reggeaton Lento (Remix) - CNCO & Little Mix

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ルイス・フォンシの「Despacito」を筆頭に今年巻き起こったラテンポップ、レゲトンブーム。スペイン語圏やアメリカのラテンチャートでヒットしたオリジナルに英語詩を加えるリミックスも作られ、ラテンチャートとHot 100のクロスオーバーが年間を通して起きた歴史的な年と言えるかもしれない。そんな中でもマイアミを拠点に活動するヒスパニック系ボーイズバンド、CNCOとイギリスのガールズバンドで1Dも手掛けたサイモン・コーウェルがプロデュースするリトル・ミックスとのコラボによる「Reggeaton Lento」のリミックスは非常に完成度が高い。オリジナルに急いで混ぜたようなリミックスではなく、大胆に曲の構成を変え、CNCOとリトル・ミックスの掛け合いとしてバランスよくリミックスされた本作は、まさに人種、国境を越えた仕上がりになっていて、レゲトンのホットなグルーヴをインターナショナルなポップソングへと昇華させた。

 

21位

Bodak Yellow - Cardi B

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18年ぶりにソロ名義(フィーチャリングなし)の女性ラッパーの曲がビルボードHot 100の1位に昇り詰めるという快挙を成し遂げたこの曲。ちなみに18年前の1位はローリン・ヒルの「Doo Wop (That Thing)」。つまり、ミッシー・エリオットやニッキー・ミナージュも成しえなかった偉業ということになる。この曲がなぜアメリカでここまで人気を得るのかと言われれば、それは彼女がアメリカンドリームを体現したからであろう。ストリートギャングのメンバーだったティーン時代、DVから逃れるお金を稼ぐためストリッパーとして働きつつミックステープを作り続ける日々。そしてメジャーデビューシングルでその快挙を成し遂げたのだ。文字だけ読めば非常に攻撃的なラップだが、そこに嫌味やヘイト、あるいは天狗のような見下す姿勢はなく、自ら血と汗と涙を流しながら夢を追う姿と、その夢を実現した自分を冷静に見つめ、それらをイーストコーストのギャングスタラップのようなニューヨークアクセントと、fワードbワードをリズミカルに織り交ぜ、トラップ的でありながらミニマルなバックトラックでラップが生える音の隙間がある。21世紀のラップクイーン誕生の瞬間かもしれない。

 

今回はここまで。次回は20位から11位を挙げていきます。

 

ではまた。