Mimaのゆるっと趣味ルーム

観た映画や聴いた音楽についてつらつらと思ったことを書くブログ。普段はゆるっと、ごく稀に大真面目に。

Mimaの個人的2017年年間洋楽ベスト30その3 -10位~1位

こんにちは、Mimaです。

 

慌ただしくなりがちな年末、私も大晦日になって駆け込むように年間ベストの記事を書いております…。急ぐところが違うような気がしなくもないですが、そこは気にしないことにします(笑)

 

さて、ついに個人的トップ10を発表する時がやってきました。前二回の記事同様、今回もあくまでパーソナルな解釈、およびランキングです。

 

では参ります。

 

10位

Butterfly Effect - Travis Scott

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ヒップホップの中でもトラップと呼ばれるジャンルに属するこの曲。「トラップ」というワードが元々ドラッグ密売所を指すものだったためか、重低音が常にブーンとなっていて、バックトラックからボーカルまでシンセのエフェクトを多用し独特の浮遊感がある、という印象。この歪んだ渦巻きのような音に一度はまると、かなり癖になる。ただこの曲は、他のトラップソングとは少しベクトルの違う雰囲気をしていて、ラップの速度もかなり遅めでメロディアスささえある。トラップホップではよくあるテーマの「俺様自慢」な内容でもなく、メインストリームのポップとしても充分キャッチーで、ラップやヒップホップが苦手な人でも入りやすい曲に思える。MVもトリッピーだがごちゃごちゃしすぎず、映像作品として観やすい。この曲のもつかっこよさに気づいたら、いつの間にかヘビロテソングの常連になっている、人を虜にする何とも言えぬ妖しさをもった一曲。

 

9位

Chinatown - Liam Gallagher

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リアム・ギャラガーの新譜は、オアシスらしいというよりも、さらに原点を突き詰め、ビートルズの影響がそこかしこに感じられる作品だった。その中でもこの曲は特にビートルズの影響が歌詞にも音にも表れている。「Happiness is still a warm gun」というフレーズは確実にビートルズの「Happiness Is A Warm Gun」という曲からきているだろうし、「警官たちが乗っ取っていった/みんながヨガをしている間に」という部分もビートルズのインドでの瞑想の時期と、サイケデリックブームでドラッグによる逮捕者がミュージシャンでも続出した時代を指していると取れる。アコースティックギターによる旋律はポール・マッカートニーっぽいし、ボーカルへのエコーのかけ方や後半音の層が分厚くなってくる部分はジョン・レノンによるサイケデリックな音作りを連想させる。MVでマンチェスター・アリーナでのいたましい爆発事件に対する「私たちはマンチェスターとともに立ち上がる」というメッセージを映すとともに、同じマンチェスター市内にあるチャイナタウンをリアムが歩き「チャイナタウンの街に連れて行ってくれ/君がそこを知ってるってことを示してくれ」と歌う部分では、リアムの地元愛と社会に対する危機感と希望の同居したメッセージを提示してくれる。ビートルズが「Blackbird」や「All You Need Is Love」で、ポピュラー音楽の中で社会的メッセージを発したように、リアムもまたその魂を受け継ぐ名曲を作った。メロディとボーカルがダイレクトに心に訴える傑作だ。

 

8位

Symphony feat. Zara Larsson - Clean Bandit

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曲単体でも、MVとセットで聴いても最高に美しい曲だ。MVが歌詞の解釈を広げるという役割も担っていて、ネットやテクノロジーの発達で映像と音楽の距離がどんどん縮まっている21世紀のポップシーンにおいてお手本のような相互関係になっている。曲は、クリーン・バンディットの得意とするクラシカルなダンスチューンだが、シンセサイザーによるドラムや鉄琴の音に生のピアノとオーケストラの音がバランスよくアレンジされていて、より洗練されたサウンドを確立している。そしてザラ・ラーソンによるパワフルなボーカルだ。サビに向けて徐々に高揚感と緊迫感を増していき、入ると同時に一気にボルテージを上げるパートは、曲の説得力を増すとともにザラ・ラーソンの類い稀なる歌唱力を見せつける最高のパフォーマンスだ。感動し、癒され、涙する、非常にエモーショナルな一曲。

 

7位

Sign Of The Times - Harry Styles

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私が今年最も泣かされた曲、それがこれだ。5分半を超える曲をシングルとして持ってきたハリー、相当自信があったのだろう。それもうなずける感動的なバラードだ。ハリーはローリング・ストーン誌のインタビューでこの曲についてこう語っている。「"Sign Of The Times"は『私たちが困難な時期にいるのはこれが初めてではないし、これが最後になることもないんだ』という観点からきている。この曲はちょうど子供を産むときの母親の視点のような場所からきている。でもそこで問題が起きるんだ。母親は『子供は無事です、でもあなたは難しいでしょう』と聞かされるんだ。母親は残された5分間で子供に伝えるんだ。『前を向いて進め、乗り越えるんだ』って」。ハリーが静かに、語り掛けるように歌いだし、子供が、広くとらえればこれからの世代が直面するであろう疑問を投げかけ、曲のクライマックスで「私たちは充分に話し合わない/もっと心を開かないとならないんだ/抱えきれなくなる前に」とブリッジの最初で歌い、最後は力を振り絞るように「この状況から抜け出さないとならない」と叫ぶ。一対一の対話形式で、ハリーは聴く者一人ひとりに語り掛ける。70年代のベルリン時代のボウイを思わせる幾層にも重なるサウンドから、その音の壁をぶち破るように歌うこの曲に、ハリーの魂を感じる。この文章を書いている今も、私の目はすでに涙で曇り始めている。

 

6位

Moonlight - Grace VanderWaal

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12歳でアメリカのオーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』に登場、ウクレレの弾き語りで自作曲を披露しゴールデン・ブザーを獲得、そのシーズンを見事優勝したのはもう有名だろう。そして彼女がEPを1枚出したのち、弱冠13歳でのデビューアルバム『Just The Beginning』のリードシングルとして発表されたのがこの曲だ。作詞作曲にはもちろんグレース・ヴァンダーウォール本人が携わっており、ウクレレも弾いている。13歳でこの歌詞と表現力はもう圧巻としか言いようがないものだ。本人いわく「よく知っていると思ってた人が自分の目の前で不自然に変わっていくのを見て、彼らを元の姿に戻そうとする曲」と語っている。壊れゆく友人の姿を「ガラスの人形」に例え、「彼女の友達はみんな大丈夫だと思っているけど、彼女がもう壊れそうなのが透けて見えるの」と語る歌詞を13歳で書いてしまうことに、感銘を受けるとともに恐怖さえ感じる。コーラス部分で「あなたが去年こう言ったのを覚えてる/ずっと一緒にいて絶対に離れないって/あなたの瞳が放つ輝きに/月明りの中踊っているような気分になった」と歌うグレース。どうやら彼女が曲を書いているということは彼女がテレビに出るまで友人たちは知らなかったようで、もしかして自分自身のことを歌っているのか?と考えてしまうと、その言葉と声の繊細さに末恐ろしさを感じてしまうのは私だけだろうか。でもこのアルバムはタイトルの示す通り「ただの始まり」に過ぎないのかもしれない。あくまでアーティスト、グレース・ヴァンダーウォールの序章であるならば、今後の期待がここまで大きいアーティストは他にいないだろう。

 

5位

HUMBLE. - Kendrick Lamar

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ケンドリック・ラマーの安定感というか、安心感に近いものはどこから来るのだろう?彼の生い立ちも想像を絶する過酷なもので、この曲が収録されているアルバム『DAMN.』が半自伝的な要素をもつ作品ならば、彼が壮絶な経験を乗り越えたどり着いた一つの決着というか、彼の信条を提示するものなのだろう。近年はヒップホップも多様化し、特にメロディックな要素の強いトラップがチャートに入ることが多い印象だが、トラップというと基本テーマは女、酒、金といった感じで、過酷な人生を経て昇りつめた現在を謳歌する、そんな姿勢にも思える。しかしケンドリック・ラマーの新譜、およびこの曲は、ミニマルなビートとピアノをベースに最低限の音で作られたバックトラックに、韻を踏み、ストーリーを語り、メッセージを主張する、90sギャングスタラップに近いアプローチをとっている。つまりビートも歌詞も、トラップのそれより攻撃的で強烈なのだ。しかし、この曲のリリックは実際に誰かや何かを攻撃するものではない。彼は「humble=謙虚」なのだ。そんな悟りを開いてしまったかのようなケンドリックがこの曲で発するメッセージは、とどのつまりサビで繰り返される「sit down, be humble(座ってろ、謙虚になれ)」ということなのだろう。父親が子供に諭すようなメッセージだ。だからこその安心感なのかもしれない。

 

4位

Woman feat. The Dap-Kings Horns - Kesha

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拒食症によるリハビリ入院や、プロデューサーとのセクハラ裁判等、音楽活動もままならない不遇の時期を乗り越えたケシャ。その名前からドルマークは消え、本名のファーストネームである「Kesha」としてカムバックしたアルバム『Rainbow』からのプロモーショナル・シングル。1stシングル「Praying」で自らの苦悩と向き合い、相手に対して「神にしか赦すことのできないこともあるの」と怒りや許しといった感情を手放し、新たな始まりを歌ったケシャ。2ndシングル「Learn To Let Go」ではタイトル通り、自分を苦しめる過去の記憶を学びに変えることで再び立ち上がったことを宣言。この2曲の間にプロモーショナル・シングルとして発表されたのが「Woman」だ。ドナルド・トランプの女性蔑視発言へのプロテストとして書かれたというこの曲は、The Dap-Kings Hornsというホーンセクションをフィーチャーし、ジェームズ・ブラウンやアトランティック・ソウルの影響を感じさせるファンク・ソウルナンバーであるとともに、「男の抱擁なんていらない」「私は今夜女性たちと楽しく過ごしてるのよ」と、女性として、また一人の人間として自立し、自分が仲間と感じる人たちとともに日々を謳歌する姿が歌われる。もうケシャは「Animal」でも「Warrior」でもなく「motherfucking woman」として自らの道を突き進むのだ。彼女の今後の活躍を祈りたいが、私があえて祈らなくても、彼女は道を切り開いていくのだろう。そんなケシャのパワーに、ただ圧倒される最高にかっこいい一曲だ。

 

3位

Homemade Dynamite - Lorde

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ロードの新譜『Melodrama』は、個人的2017年ナンバーワンのアルバムだ。アルバム全体で一つの作品としてまとまっているのはもちろん、鑑賞後に何とも言えぬ余韻が残る、そんなアルバムは生涯聴いてきたアルバムの中でも数少ない。そのアルバムの中の中でも特に惹かれたのがこの曲。アルバムを通して「パーティでの一夜」という大まかなコンセプトを基に10代後半特有の虚無感にスポットを当てた作品だったが、この曲は、虚無感とそれへの一時的な埋め合わせ、そしてその埋め合わせ自体がもつ虚無感という心理的パラドクスを、その場で出会った男性にアプローチしつつ「手製のダイナマイトでいろいろと爆発させたい」という衝動性で的確に表現している。ロードの歌声は力強くも脆く、歌詞は散文詩的な要素を増し、空白の部分が多い。そのパワフルさと脆さ、言葉にならない空白の部分にこそどうしても埋められない虚無感が表れているのだ。そんなロードの思いを反映してか、バックトラックにも空白の部分があり、ロードの声を引き立たせるとともに、曲全体のトーンとしての空虚感を増す効果になっている。ポップアーティストでありながら、唯一無二の世界観を展開するロードにしかできない離れ技だ。

 

2位

Hard Times - Paramore

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エモバンド、パラモアのボーカリストとしてエモ界では珍しかった女性フロントの代表格となった頃、ヘイリー・ウィリアムズはまだ10代後半だった。その後パラモアはバンドメンバーとの確執、脱退、メディアによりヘイリーへのバッシング、著作権の訴訟、といった苦難を経験してきた。「何度もバンドを辞めたくなった」と語るヘイリーが、パラモアとして発表したニューアルバムは、サウンドと歌詞の両面から過去のパラモアと決別した作品だった。この曲はそんなアルバムからのリードシングルで、エモやパンクの要素は全くなく、80年代初期のディスコ、ニューウェーブを思わせるポップでダンサブルな曲だ。今までのパラモアからは想像もできないほどカラフルなナンバーだが、歌詞はこれまでになくダークで内向的だ。「辛いとき/なんで自分がまだ挑戦しようとしてるのかわからなくなる/辛いとき/私を突き落として泣いているときに嘲笑する」と、孤独な戦いを赤裸々に歌いつつ、コーラスの最後で「底打ちしなきゃならないんだ」と、叫んでいるとも開き直っているとも取れるような勢いでポップに締めくくる。どん底は経験した、辛い時期はまだ終わっていない、でも自分はパラモアの一員として再出発するんだ、というヘイリーの決意が感じられる。悩んでいるとき、苦しいときにこそ聴きたくなる共感的な応援歌だ。

 

1位

Sorry Not Sorry - Demi Lovato

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今年のアメリカン・ミュージック・アワードでも披露され印象的なパフォーマンスとなったこの曲。SNSで彼女に向けられた心無いヘイトの数々。落ち込み、傷ついただろう。しかし彼女はヘイトに対して、怒りや悲しみといった負の感情で返すことはしなかった。彼女が最新作『Tell Me You Love Me』からのリードシングルとして発表したこの曲は、彼女にヘイトを向ける人々に対し「ごめんね、哀れにも思わないわ」と言ってのけ、最高にポップな曲調と、最高にハッピーなホームパーティのMVで最高に楽しんでいるデミ・ロヴァートを見せつけたのだ。その姿は、レイトティーンの頃のアルコール依存やその後のメディアバッシングも乗り越え、さらにSNSでのヘイトも乗り越えたデミだからこそたどり着くことのできた強さに満ちている。彼女のボーカルもこれまでになく自信に満ち溢れているし、MVの彼女は過去最高に輝いている。ここまでの道のりは長かっただろう。しかし、その暗く長いトンネルを抜けたとき、その人が本来持っている魅力を最大限に発揮できるのだ。そしてそのパワーは、リスナーの元に時と場所を越えて届くのだ。私が今年度ナンバーワンに選んだこの曲は、私が今年を生き抜くパワーをくれた、最高に明るいペイバックの曲だ。

 

Mimaの個人的年間洋楽ベスト30はこんな感じです。みなさんはどうでしたか?よく「音楽は人生のサントラ」と言われますが、その時その時自分が聴きこんだ曲、救われた曲、楽しんだ曲は、生涯の宝になると思っています。今回私が挙げた30曲は、今年の私のサントラです。このブログを読んでくださっているみなさんにも、音楽に限らず、今年の思い出になるような作品との出会いがあったらいいな、と思いつつ、これを今年最後の記事とさせていただきます。

 

読んでくださった方ありがとうございました。来年もゆるりと続けていきますのでよろしくお願いします。

 

では、よいお年を。